平井焼

栃木市のお土産「なまずの箸置き」

会津美里町(旧会津本郷町)の宗像窯七代目宗像亮一氏に師事した田部井茂さん。「土が生きているんですね。艶やかで、色気もあるし。脈を打っているよう。これが本当の土なんだと思って。ここしかないと」。宗像窯で働きたいと直談判した当時を振り返ります。

6年間の修行を終え、栃木市平井町へ。小高い山の上に窯元「平井焼」を開きます。「この山の中を見ていたら、植物が下から伸びてくるんですよ。すごく生命力に溢れた線なんです」と田部井さん。植物をろくろの前に置き、「この線で器を造る」と形成していたことも。それから37年が過ぎました。

陶芸との出会いは土との出会いでもある田部井さん。独自の工程によって、栃木市周辺の土と取り寄せたものとの5~6種類を混ぜ合わせ、粗目の土を作ります。焼き物は、土と釉(うわぐすり)と窯や温度によっても色と質とが変わるそうです。例えば「土から出てきた物質が釉に溶け込んだり透けて質感を変えたりして、雰囲気が出てきて。景色になるんですね」と茶碗を手に教えてくれました。また、釉は同じでも、土の純度や粒子によって発色が変わり、窯や温度によっても色と質とが一つになるそうです。

 

ピュッと天に昇っていくような、生き生きとした曲線が魅力「なまずの箸置き」は栃木市のお土産に考案したもの。栃木市に伝わる鯰(なまず)の伝説「うずまの鯰」からイメージを膨らませ、形にしました。

特注もなるべく受けており、「使う方がどんな人で、どんな楽しみ方をして・・・グーッと考えていって、その人に乗り移ったみたく」と田部井さん。考え抜くことで、今までになかった新たなイメージが生まれ、それが有難いとも。陶芸体験も行っています。